うに漁のはじまりは節句磯から。年に一度のうに祭り
だんだんと日が長くなり、青々とした磯のあおさや木々の新芽。島生活のなかで、今までよりもすこし繊細に、季節が巡ってゆくのを実感しています。
壱岐島では、そんな自然のながれや暮らしに根づいた地域の行事ごとが、今もおおく受継がれています。そのうちのひとつが、私も楽しみでしかたがなかったうにの口開け、「節句磯(せっくいそ)」です。
ついについに、うにの季節がやってきました!!!
節句磯の様子を、ワタナベ目線でご紹介します。
とれたてのうに。殻をわって身入りをチェック
節句磯は、1~2日間の日程で、旧暦の3月1日前後で大潮のときに開催されます。地元にすむ人なら、自家消費用にだれでも磯にいくことのできる、いわば年に一度のうに祭り。(うにとりに行くことを「磯に行く」といいます)
海女さんはもちろん、普段はいかない人もこぞって磯へ。ちなみに潜ってはいけないことなどのルールがあります。
(※節句磯の日程やルールは、各地区の漁協によって異なります)
もともとは、節句のお祝いのための、おごちそうのためのイベント。とったうにを「うにめし」にしたり、さざえを炊いたり。それを、取っ手のついた引き出し型で3段くらいのお重に詰めて、お花見に持っていったそう。
今ではあまりしないようですが(桜もおわってるし…)、島のすてきな文化だなぁと。この日、私はとるのに精一杯だったけど、いつか再現したいです。
節句磯の日。左上の、海水をくんでいるのが私。
いまだ磯歴2年目のぴよぴよの私は、今年も師匠にくっついて磯へ。
海のお宝をさがしに…いちご狩りに行くような感覚…いや、それ以上のうかれ具合で、私も「節句磯」に参戦です。
海に入る前には、まず塩でお清めから。
海に感謝し、身の安全を願ってからはじめます(この習慣は壱岐でも地区によるようです)。すこし冷たい水温も、徐々に慣れていきます。
うには岩の隙間にくっついているので、先が尖った「うにかぎ(おんかぎ)」と小さい網の「タモ」でとって、腰にまきつけている「テボ」(網)に入れておきます。テボがいっぱいになったら、陸のほうに置いている「籠」にうつす流れ。
左から、てぼ、たも、うにかぎ、籠。籠は、初心者サイズで小さめのものを。
実はうに、意外とうごく生きもの。穴の中や岩の隙間にいるうには、もたもたしていると奥に逃げてしまいます。あれを採るぞ!と狙いを定めたら、ひとおもいにグイッとうにかぎで岩場から引き剥がすイメージで。
専用のおおきな水中メガネでうにを探すのに夢中になると、時間が経つのもあっという間。2時間しないくらいで籠いっぱいになりました。ちなみに師匠は倍くらいのうにと、ミナやサザエ、そしてなんとアワビまで!
冷えたからだには、甘いものを。中にあんこが詰まったかすまき。
波にゆられてきもちよかった反面、体力は一気に奪われてしまう磯。ずっと下を見ているから腰が痛くなったりもするんですが、80代の先輩たちもせっせとと磯仕事をしているので、私もつい張り切ってしまいました。
さて、このあとは採ったうにの殻から身を選別する作業「うに掻き(かき)」。これがちょっと…いや、かなり大変なんですが、うには鮮度が命。その日中に仕上げてしまいます。
うに掻きについては、また次回のうにっきで、ご紹介します。
本格的なうに漁がはじまるのは、5月に入ってから。壱岐島の新うに、しばしお待ちくださいね。